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■野口レポート

No.347 蘇る集落 (令和7年8月)

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歴史には興味がありました。特に縄文時代や弥生時代など、古代の歴史にはロマンがあります。考古学の道へ進むことが子供の頃からの夢でした。だが、人生いろいろです。気がつけばGスタンドから相続実務家へと、考古学とは全く縁のない道を歩んでいます。
戦後の住宅政策が軌道にのりはじめた昭和32年頃の話です。川崎の井田丘陵で宅地の開発が始まりました。造成中の丘からは弥生時代の土器の破片がたくさん出てきました。
工事のおじさん達にはただのガラクタですが、野口少年にとっては宝物です。造成現場は宝の山でした。おじさん達に何度追い払らわれても、スキをみてはシャベル片手に造成現場で破片を採取しました。採取した破片は一つひとつ丁寧につなぎ合わせ復元していきます。壷や鉢がその輪郭を表します。復元した土器を手にすると、はるか大昔にタイムスリップし、この壺を手にしていた古代人の想いや生活までが目に浮かび胸がときめきます。
話を現代に戻します。以前Aさんの地主相続をコーディネートしました。数億円の相続税も何とか納付でき一息です。Aさんは近くの丘にある生産緑地を相続しました。主たる農業従事者(父)の死亡で、猶予されていた生産緑地の相続税は免除となり、宅地転用が可能です。相続は生産緑地を宅地にできるチャンスです。


引き続き生産緑地として相続すれば、生涯営農や担保の提供を条件に農地に課せられる相続税がふたたび納税猶予(免除でない)されます。どちらを選ぶか、この選択は都市農家にとって重要です。
Aさんには遡及課税の恐ろしさと生涯営農のリスクを十分説明し、生産緑地を解除し宅地転用を選んでいただきました。
換金も土地有効活用のひとつです。相続は入り口であり、出口が大切です。大事なことは、相続後に明るく楽しくゆとりある人生を過ごせるかです。借金コンクリートの立派なマンションより、無借金木造アパートの方が、お金が残ることがあります。いかに手元にお金を残せるか、見栄でなく実を取ることが大切です。
宅地転用した生産緑地の買主は戸建業者です。この付近は埋蔵文化財包蔵地域内にあるため「文化財保護法」の制限があります。
考古学に興味のある私は、丘陵にある造成現場のロケーションを一目見て、必ず遺跡がでると思いました。試掘調査で予測したとおりに溝状遺構が確認されました。
教育委員会文化財課と協議の結果、正式な発掘調査が必要となりました。調査が終わるまで土地に手はつけられません。調査費用は地主の負担となります。Aさんに負担はかかりましたが、農業後継者や生涯営農のリスクを考えると、生産緑地を宅地転用し、売却換金した判断は間違いでなかったと思っています。
はるか大昔、古代人が集落を築いていた丘が、数千年の時を経て現代人の戸建集落として甦ります。歴史はまさにロマンです。

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